放棄呼とは?意味・読み方や発生原因、放棄呼率を下げる対策を解説

企業のコールセンターやコンタクトセンターでは、「電話がつながらない」状況は顧客の不満を招き、売上や契約の機会を失う深刻な問題となります。特に注意すべきなのが、「放棄呼(ほうきこ)」と呼ばれる現象です。
放棄呼とは、顧客が電話をかけてもオペレーターにつながる前に諦めて切ってしまうことを指します。たとえば、待ち時間が長すぎる場合や、案内音声だけが続く場合に発生しやすくなります。
この記事では、放棄呼の意味や読み方、発生する主な理由をわかりやすく解説します。また、放棄呼が企業にもたらす顧客満足度の低下・信頼の損失・機会損失といった悪影響についても説明します。さらに、これらの問題を防ぐための効果的な対策や、放棄呼を減らすためのツールやシステムの活用方法についても詳しく紹介します。
放棄呼とは?意味や読み方を紹介

放棄呼(ほうきこ)とは、顧客がコールセンターやコンタクトセンターに電話をかけたあと、オペレーターにつながる前に通話を終了してしまうケースを指します。英語では「Abandoned Calls」と呼ばれます。
顧客が電話をかける理由は、商品の確認、サービスの申し込み、トラブル対応など明確な目的があります。しかし、待ち時間が長すぎる、音声ガイダンスの操作がわかりにくいといった理由から、通話途中で諦めて電話を切ってしまうことがあります。こうして、オペレーターにつながらないまま終わってしまった通話が「放棄呼」です。
放棄呼の件数は、コールセンターの対応レベルや顧客満足度を測定する重要な指標のひとつです。放棄呼が多い場合は、顧客が必要としていた対応の機会を逃している可能性が高く、企業の信頼や売上にも影響を与えることがあります。
放棄呼率とは?
放棄呼率(ほうきこりつ)とは、コールセンターやコンタクトセンターにかかってきた全ての電話(全入電数)のうち、放棄呼となった件数の割合を示す指標です。次の計算式で求められます。
放棄呼率(%) = (放棄呼の件数 ÷ 全入電数) × 100
例として、1日の全入電数が500件あり、そのうち25件がオペレーターにつながる前に切断された場合、放棄呼率は以下のように計算されます。
(25 ÷ 500) × 100 = 5%
放棄呼率が高いほど、「電話がつながりにくいコールセンター」であることを意味し、顧客の不満が高まっている可能性が大きいと考えられます。
そのため、多くの企業では放棄呼率を重要なKPI(重要業績評価指標)として設定し、待ち時間の短縮や人員配置の最適化、IVR(自動音声応答システム)の改善などを行い、放棄呼率の低減に取り組んでいます。
あふれ呼との違い
放棄呼と混同されやすい言葉に、「あふれ呼(あふれこ)」があります。両者は「電話がつながらない」という点では共通していますが、発生する状態が異なります。
-
放棄呼:顧客がコールセンターにつながり、オペレーターにつながるまで待っている間(待ち呼)に、待ちきれず自分の意思で電話を切ってしまう状態。
-
あふれ呼:コールセンターの電話回線がすべて使用中で、そもそも通話が開始されない状態。顧客には「ただいま回線が混み合っております」といったアナウンスや、話し中音が流れます。
関係性のイメージ
-
電話をかける → 回線が空いていない → あふれ呼(通話が始まらない)
-
回線はつながる → 待ち時間が長すぎる → 放棄呼(顧客が諦めて切る)
つまり、あふれ呼や長時間の待ち呼が続いた結果として放棄呼が発生することが多いという流れです。いずれの場合も、顧客の不満が高まり、企業は対応や成約のチャンスを失う可能性が大きくなります。このため、事前に適切な人員配置やシステム改善などの対策を講じることが重要です。
放棄呼が発生してしまう原因
なぜ放棄呼は発生してしまうのでしょうか。その原因は一つではなく、複数の要因が複雑に絡み合っていることが多いです。
原因①:オペレーターの不足
放棄呼の最も直接的で分かりやすい原因は、オペレーターの人数不足です。顧客からの入電数に対して対応できるオペレーターの数が足りない場合、必然的に顧客を長時間待たせることになります。
特に注意が必要なのは、特定の時間帯や曜日、セール・キャンペーン期間など入電が集中するタイミングです。こうした繁忙期に人員が需要に追いつかないと、待ち時間がさらに長くなり、顧客が諦めて電話を切る=放棄呼の増加につながります。
原因②:コールセンターの対応効率が悪い
オペレーターの人数が十分に足りていても、一人ひとりの対応効率が低ければ、結果的に電話はつながりにくくなります。これは、平均処理時間が長くなり、待ち時間が増えることで放棄呼を誘発するためです。
コールセンターの対応効率が悪くなる主な原因は、以下のとおりです。
-
新人オペレーターが多い:経験不足により回答に時間がかかったり、保留時間が長くなったりする。
-
業務フローが複雑:顧客情報の確認やシステム入力に時間がかかる。
-
FAQやマニュアルが整備されていない:必要な情報を探すのに時間を要する。
これらの要因が重なると、1件あたりの平均処理時間(AHT:Average Handling Time)が延び、他の顧客の待ち時間が増加します。その結果、顧客が待ちきれずに電話を切ってしまう=放棄呼が発生する可能性が高まります。
原因③:かかってくる電話の数が多い
テレビCMの放映、新商品の発売、サービス仕様の変更など、特定のイベントによって、一時的に入電数がコールセンターの処理能力を大きく超える場合があります。
こうした入電数の急増は事前に予測できるケースも多く、適切な人員配置やシフト調整、システム面での事前対策ができていないと、あふれ呼や放棄呼が多発します。
原因④:待たされることによる顧客側のストレス
電話をかける顧客は、多くの場合、何らかの問題を抱えており、できるだけ早く解決したいと考えています。そのため、長時間待たされることは大きなストレスとなります。
最初は辛抱強く待っていた顧客でも、
-
「いつつながるかわからない」
-
「単調な保留音が不快」
と感じ始めると、徐々にイライラが募ります。やがて、「後でかけ直そう」「もういいや」とあきらめて電話を切ってしまい、放棄呼につながります。特に、通話料が顧客負担の場合は、待ち時間が長くなるほど金銭的負担も増え、放棄呼の発生率がさらに高まる傾向があります。
放棄呼を放置するデメリット

放棄呼を放置することは、企業にとって多くの不利益をもたらします。ここからは、放棄呼が発生することによるデメリットを具体的に見ていきましょう。
デメリット①:機会損失
放棄呼による影響の中でも、最も大きいのが「機会損失」です。
電話をかけてきた顧客は、商品を購入する意思があった可能性があります。あるいは、アップセル(より高額な商品提案)やクロスセル(関連商品の提案)につながる既存顧客だったかもしれません。通話が成立しなければ、これらの販売機会はすべて失われます。
さらに、問い合わせやクレームといった顧客の声は、サービスや製品の改善に活かせる貴重な情報源です。放棄呼が発生すると、そうした意見を受け取る機会も減り、結果的に企業の成長や顧客満足度向上のチャンスにブレーキがかかる可能性があります。
デメリット②:企業イメージの低下
「あの会社は電話をかけても全然つながらない」という評判は、口コミやSNSを通じて瞬く間に広がる可能性があります。一度「顧客対応が悪い企業」というネガティブなイメージが定着すると、それを払拭するのは容易ではありません。
企業イメージの低下は、
-
新規顧客の獲得を難しくする
-
既存顧客のブランドへの信頼を損なう
といった影響をもたらします。たとえ製品やサービスの品質が高くても、サポート体制への不満が原因で顧客が競合他社へ流出してしまうことも十分にあり得ます。
デメリット③:顧客満足度の低下
「困りごとを解決したくて電話をかけたのに、長時間待たされ、最後には諦めて切るしかなかった」——このような体験は、顧客満足度を大きく低下させる原因となります。たとえ後日、問題自体は解決したとしても、「長時間待たされた」という不満は消えにくく、その悪い印象が顧客の記憶に残ることがあります。
顧客満足度が下がると、
-
解約やサービス利用停止につながる
-
継続的な購入や契約更新が減少する
といった形で、企業の収益に長期的な悪影響を及ぼす可能性があります。
デメリット④:オペレーターの負担増加
放棄呼が多発している現場では、顧客だけでなくオペレーターにも大きな負担がかかります。次々と電話が鳴り続け、休憩を取る間もなく対応を続ける状況では、心身ともに疲労が蓄積しやすくなります。
さらに、ようやくつながった顧客が長時間待たされたことに強い不満を抱えているケースも多く、オペレーターは問い合わせ内容を聞く前にまず不満を受け止め、落ち着いてもらう対応を求められます。これが精神的なストレスを大きく高める要因となります。
この状態が続くと、離職者が増えて人手不足が深刻化します。その結果、電話対応の質が低下し、さらに放棄呼が増えるという悪循環に陥るおそれがあります。
放棄呼率を下げるための対策
放棄呼がもたらすデメリットを理解した上で、次はその具体的な対策について見ていきましょう。
対策①:オペレーターを教育して効率を上げる
各オペレーターのスキルアップは、コールセンター全体の対応力を底上げするために不可欠です。対応力が向上すれば、1件あたりの処理時間短縮や顧客満足度の向上につながり、放棄呼の減少にも直結します。
オペレーターを成長させるための効果的な方法は、以下のとおりです。
-
トークスクリプトの改善:顧客にとって分かりやすく、効率的に案内できるスクリプトを用意し、定期的に内容を見直す。
-
定期研修の実施:製品知識、システム操作、応対品質などに関する研修を定期的に行い、全体のスキル底上げを図る。
-
ナレッジ共有の促進:よくある質問や優れた対応事例をチーム内で共有し、誰もが参照できる仕組みを整える。
対策②:問い合わせ手段を増やす
電話以外の解決チャネルを用意することは、放棄呼防止の有効な対策です。電話への問い合わせが集中すると待ち時間が長くなり、放棄呼が増える原因となります。これを避けるために、顧客が自分に合った方法で問題を解決できる環境を整えることが重要です。
具体的には、メール、チャット、SNS、FAQページなど複数の選択肢を提供し、顧客が状況や好みに応じて最適な方法を選べるようにします。これにより、電話回線の混雑緩和、顧客満足度の向上、オペレーター負担の軽減が期待できます。
対策③:FAQやチャットボットを設置する
多くの顧客は、コールセンターに電話をかける前に、まず企業のWebサイトで自己解決を試みます。そのため、Webサイト上の「よくある質問(FAQ)」を充実させることは、入電数を減らすうえで非常に効果的です。
さらに、チャットボットを導入すれば、24時間365日いつでも顧客の簡単な質問に自動応答できます。FAQを探す手間を省き、対話形式で解決策を提示できるため、顧客の自己解決率が大幅に向上します。
このように、FAQやチャットボットの活用は、コールセンターへの入電削減だけでなく、放棄呼率の低下にも大きく貢献します。結果として、顧客満足度の向上やオペレーターの負担軽減にもつながります。
対策④:IVR(自動音声機能)を導入する
IVR(Interactive Voice Response:自動音声応答システム)は、放棄呼対策として最も直接的かつ効果的なソリューションの一つです。
IVRを導入すると、顧客からの入電にまず自動音声が応答し、用件に応じて適切な部署へ振り分けたり、簡単な手続きを自動で完了させたりできます。これにより、無駄な待ち時間を減らし、放棄呼の発生を防止できます。
IVRの主な機能
-
用件の振り分け:例「お申し込みの方は1を、操作方法については2を…」と音声ガイダンスで案内し、適切なオペレーターへ効率的に接続。
-
あふれ呼対策:回線混雑時に「後ほどこちらからお電話します」とコールバック予約を受け付ける。
-
簡単な手続きの自動化:住所変更や資料請求などの定型業務を、オペレーターを介さず自動処理。
おすすめのIVRはVoiper Dial

数あるIVRシステムの中でも特におすすめしたいのが、アライブネットが提供する「Voiper Dial」です。Voiper Dialは、インバウンド・アウトバウンド双方に対応できる高機能なCTIシステムであり、放棄呼対策に大きな効果を発揮します。
Voiper Dial導入のメリット
「Voiper Dial」を導入するメリットは多岐にわたりますが、特に放棄呼対策という観点からは以下の点が挙げられます。
・豊富なIVR機能
自動音声ガイダンスによる適切な振り分けはもちろん、着信転送機能なども充実しており、顧客を待たせない柔軟なコールフローを設計できます。これにより、放棄呼の削減が期待できます。
・コールセンター全体の稼働率の向上
ACD(着信呼自動分配装置)やIVRの活用により、オペレーターの待機時間を削減し、コールセンター全体の稼働率と生産性を最大化します。これにより、放棄呼の削減が期待できます。
・インバウンド・アウトバウンド両対応
受信機能だけでなく、プレディクティブ発信(予測発信)などのアウトバウンド機能も利用できるため、コールバック対応も効率的に行えます。
・低コストでの導入・運用
クラウド型のため、従来のオンプレミス型のような高額な初期投資は不要です。
・品質向上とコスト削減
全通話録音機能やモニタリング機能を活用してオペレーターの対応品質を管理・向上できるほか、独自の通信回線「AliveLine」により通話料の大幅な削減も可能です。
Voiper Dialの導入費用
Voiper Dialの料金プランは、非常にシンプルで分かりやすい設定になっています。必要な機能やブース数に応じて柔軟にプランを組めるため、無駄なコストをかけずにスモールスタートできるのも大きな魅力です。
基本料金(1ブースあたり)
- 初期費用: 10,000円(税抜)
- 月額費用: 10,000円(税抜)
Voiper Dialの詳しい機能や費用については、以下のサービスページをご覧ください。
放棄呼対策はアライブネットにご相談ください
この記事では、「放棄呼」の読み方や意味、発生する原因、そして放棄呼率を下げるための具体的な対策について説明してきました。
放棄呼は表面化しにくいものの、確実に利益に影響を与える深刻な課題です。企業が販売や契約のチャンスを逃さず、顧客からの信頼を維持するためには、放棄呼の発生を減らす取り組みが不可欠です。
対応品質を高めるには、オペレーターの教育やFAQの見直しなど日々の改善が重要です。そのうえで、IVRシステムを導入することで放棄呼対策をさらに強化できます。
特に、Voiper Callはコストを抑えつつ高機能を備え、コールセンター業務の効率化を大きく後押しするツールとして注目されています。人手不足や顧客対応の質に課題を抱える企業にとって、有力な改善手段となるでしょう。
放棄呼の改善は、事業成長を支える重要な一歩です。この機会にVoiper Dial」の導入を検討してみてはいかがでしょうか。
Voiper Dialに関するご質問やご相談は、アライブネットまでお気軽にご連絡ください。