AI電話自動応答とは?導入のメリットやIVRとの比較を紹介

「AIを使った電話対応で、業務の効率化や顧客満足度の向上を図りたい」と考えている方も多いのではないでしょうか。AIによる電話自動応答を導入すれば、24時間いつでも対応が可能なうえ、問い合わせや予約の受付もスムーズに行えます。
従来のIVR(自動音声応答)とは異なり、AIは人の会話を理解し、より柔軟な応答ができる点が大きな特徴です。
本記事では、AI電話自動応答の仕組みや導入によるメリット、従来のIVRとの違いについて、わかりやすく解説します。電話業務の効率化やコスト削減を目指す企業にとって、役立つヒントが詰まっています。
AI電話自動応答とは

AI電話自動応答とは、AI技術を活用して電話対応を自動化するシステムです。音声認識や自然言語処理を使って、顧客からの問い合わせに応答します。
従来のIVR(自動音声応答)は、事前に用意された選択肢を顧客がプッシュ操作で選ぶ方式が一般的でした。それに対し、AI電話自動応答では音声を認識して内容を理解し、まるでオペレーターと会話しているかのような自然な対応が可能です。
このようなシステムを導入することで、業務の効率化だけでなく、迅速かつ高品質な顧客対応を実現できます。そのため、導入を検討する企業が増えており、実際に活用されているケースもあります。
たとえば、SBI生命保険株式会社では、年末調整や確定申告の時期に多く寄せられる「生命保険料控除証明書の再発行」に関する問い合わせ対応を、AI電話自動応答によって自動化しています。
AI電話自動応答の仕組み
AI電話自動応答では、まずAIが電話を受けると、音声認識技術を使って、顧客の話した内容をリアルタイムでテキスト化します。次に、このテキスト化された内容を自然言語処理(NLP)で分析し、顧客の意図やニーズを把握します。
たとえば、株式会社日立システムズが提供する対話型自動応答AIサービス「CAIWA Service Viii」では、会話の流れの中でユーザーの意図を読み取り、適切な回答を導き出す仕組みが採用されています。
こうして導き出された回答は、音声合成技術によって音声として再生され、ユーザーに返答されます。これが、AI電話自動応答の基本的な流れです。
従来の音声合成では、話し方が機械的で、不自然な印象を与えることが課題でした。しかし、現在のAI音声合成は大きく進化しており、自然な抑揚やイントネーションを再現できるようになっています。これにより、より人間らしい応答が可能になり、違和感のない対応が実現されています。
AI電話自動応答のメリット

本項目では、企業がAI電話自動応答のシステムを導入するメリットについてまとめました。代表的なメリットは以下の3つです。
1.自然な対話で解決につなげられる
コールセンターでは、顧客から寄せられる問い合わせの多くが「よくある質問(FAQ)」に分類されます。こうした質問に対しては、AIが適切に対応することで、オペレーターを介さずに納得のいく回答を提供できます。
このような対応は従来のIVRでもある程度は可能です。しかし、AI電話自動応答なら、顧客が自由に話した内容を理解し、柔軟に対応できます。顧客にとっては、まるでオペレーターと直接会話しているような、自然でスムーズなやり取りが可能になります。
また、AIが対応しきれない内容については、その部分だけを人のオペレーターに引き継ぐことができます。これにより、顧客は必要なときに適切な対応を受けられ、サービスの質を維持しながら、オペレーターの負担も軽減されます。
AI電話自動応答の導入によって、多くの人員を配置する必要がなくなり、コールセンター運営のコスト削減にもつながります。
2.学習や改善が行える
AI電話自動応答は、過去の通話データをもとに学習し、応答の精度を継続的に高めることができます。たとえば、顧客からの質問パターンを分析し、それに適した回答を自動で最適化することで、よりスムーズな対応が可能になります。
一方、従来のIVRは、あらかじめ設定された選択肢の中から選ぶ方式のため、柔軟な対応が難しいという課題があります。それに対してAIを活用すれば、FAQの内容を自動でアップデートしたり、顧客からのフィードバックを基に応答内容を改善したりすることができ、新しい問い合わせにも柔軟に対応できます。
さらに、蓄積された通話データを活用して、よく使われるフレーズや言い回しを洗練させることで、より自然で人間らしい会話も実現可能です。
このように、AI電話自動応答は「学習しながら進化する」仕組みによって、顧客満足度の高い応対ができる点が大きな魅力です。
3.外部のシステムと連携できる
AI電話自動応答は、外部の業務システムと連携することで、リアルタイムに情報の取得や処理を行うことができます。
たとえば、顧客が「注文状況を知りたい」と話せば、AIが自動で注文管理システムと連携し、最新の配送状況を確認。そのまま音声で回答することが可能です。また、「予約を変更したい」といった問い合わせにも、予約システムと連携して空き状況を確認し、必要に応じて変更手続きまで対応できます。
一方、従来のIVRでは、あらかじめ設定された選択肢の中からしか選べないため、詳細な対応や個別の情報確認には限界があります。多くの場合、オペレーターへの引き継ぎが必要です。
AIを活用すれば、顧客が求める情報を迅速かつ正確に提供できるため、利便性が大きく向上します。同時に、オペレーターの負担も軽減され、業務効率の改善にもつながります。
AI電話自動応答のデメリット
AI電話自動応答のシステムの導入を検討する際には、デメリットの部分も理解しておく必要があります。主なデメリットを以下にまとめました。
1.コストがかかりやすい
AI電話自動応答システムを導入する際は、従来のIVRと比べて、導入や運用にかかるコストが高くなる傾向があります。
たとえば、AIによる音声認識や自然言語処理を活用するには、専門的なエンジンの導入や、自社の業務に合ったカスタマイズが必要となる場合があります。こうした開発・調整には、一定の費用がかかります。さらに、外部の業務システムと連携する場合は、API開発や設定作業なども必要です。
一方、クラウド型のIVRであれば、初期コストを抑えながら利用を始めることができ、従量課金制で必要な分だけ利用するスタイルが一般的です。
2.必ずしも機能するとは限らない
現在のAI電話自動応答システムは高精度になってきていますが、すべての音声を完全に理解できるわけではありません。
特に、これまでの学習データに含まれていない独特な話し方や、地域特有の方言などには対応が難しいことがあります。その結果、音声を誤って認識し、不適切な回答を返してしまう可能性もあります。
また、AIの音声認識の精度は、通話環境にも大きく影響されます。たとえば、通信状態が悪く、雑音やエコーが混ざっている場合、音声が正確に認識されないことがあります。このような状況では、顧客の伝えたいことが正しく処理されず、誤解やストレスにつながるリスクもあります。
3.複雑な内容に対応しにくい
AI電話自動応答は、シンプルな内容のやり取りには十分対応できます。しかし、会話が複雑になったり、イレギュラーなケースが発生したりすると、対応が難しくなることがあります。特に、文脈を深く理解したり、判断を要したりする内容では、スムーズに返答できない可能性があります。
そのため、すべての電話応対をAIに任せるのではなく、人間のオペレーターとの適切な連携が不可欠です。AIが一次対応を担い、内容が複雑だったり、判断が必要になったりする場合には、オペレーターにスムーズに引き継ぐ体制を整えることが重要です。こうしたハイブリッドな対応体制をとることで、顧客満足度を損なうことなく、業務効率化と対応品質の両立が図れます。
4.シナリオの作成が面倒
AI電話自動応答システムを導入する際は、最初に設定する「シナリオ(応答フロー)」の作成が非常に重要です。
AIは音声認識を使って顧客の話す内容を理解しようとしますが、正確かつ適切な応答を行うには、あらかじめ想定される問い合わせパターンを整理し、それに応じた返答を用意しておく必要があります。問い合わせの意図が分類されておらず、シナリオが不十分だと、AIの応答が不自然になり、顧客対応の品質が低下してしまう可能性があります。
そのため、過去の問い合わせ履歴を分析し、よくある質問や顧客のニーズを整理したうえで、対応パターンごとにシナリオを設計することが求められます。ただし、このシナリオ作成作業は工数がかかりやすく、導入時のハードルになることもあります。
一方で、案内する内容が非常にシンプルで、選択肢が限られているようなケースでは、AIを使わずとも、従来型のIVRで十分対応できる場合もあります。
AI電話自動応答を導入する際のポイント
本項目では、AI電話自動応答を導入する際のポイントを解説します。
1.サポート体制の状況
AI電話自動応答システムを導入する際には、提供元のサポート体制が十分に整っているかを事前に確認しておくことが重要です。
導入当初は問題なく運用できたとしても、継続的に使っていく中で、予期せぬトラブルや運用上の課題が発生する可能性があります。こうしたときに、迅速かつ的確に対応してくれるサポート体制が整っていなければ、業務に支障をきたす恐れがあります。
また、AIの応答精度を維持・向上させるためには、定期的なメンテナンスや、利用状況に応じたシナリオの見直し・調整が欠かせません。こうした運用フェーズにおいても、ベンダーがどこまで手厚くサポートしてくれるかが、安定運用のカギとなります。
AI電話自動応答は「導入して終わり」ではなく、「導入後のフォロー」があってこそ本来の効果を発揮します。安心して使い続けられる環境を構築するためにも、ベンダーのサポート体制は慎重に見極めましょう。
2.機能の有無や質
AI電話自動応答システムを導入する際は、システムにどのような機能が搭載されているかをしっかり確認することが欠かせません。
一見すると同じようなシステムに見えても、実際には搭載機能や強みはベンダーごとに大きく異なります。たとえば、音声認識の精度が高いシステムもあれば、感情分析や多言語対応に特化しているシステムもあります。これらの機能の有無や精度は、顧客対応の質に直結するため、重要な選定ポイントです。
また、自然言語処理(NLP)のレベルや、全体的な応答の自然さ・的確さといった点も、システムによって差があります。そのため、自社の業務内容や顧客ニーズに照らして、「どの機能が必要で、どの品質レベルを求めるか」を明確にしながら、複数のシステムを比較・検討することが大切です。
3.AIの精度
AI電話自動応答システムにおいて、最も重要な要素のひとつが「AIの精度」です。とくに音声認識や自然言語処理の精度が低いと、顧客の話す内容を正確に理解できず、誤った対応をしてしまう可能性があります。その結果、思ったような業務効率化が図れなかったり、顧客満足度の低下につながったりする恐れがあります。
そのため、導入を検討する際には、AIの認識精度や対応能力を事前にしっかり確認し、自社の業務に合った性能を持つシステムを選ぶことが重要です。AIの処理能力や精度は、システムごとに異なるため、比較・検証を行うことが欠かせません。
たとえば、「AIレセプション」のようなAI電話予約応対サービスでは、AIが顧客と音声で対話しながら、予約の確認や空き状況の案内、日程の提案などを行います。こうしたサービスも、AIの音声認識や応答の精度が高いからこそ成り立っているのです。
AI電話自動応答よりもIVRの方がよいケース
ここまでAI電話自動応答について導入のメリット・デメリットを解説してきました。一方で、IVRの方が向いているケースもあります。本項目では、IVRの方がよいケースをまとめました。
1.シンプルな問い合わせが多い
AI電話自動応答は高度な対応が可能ですが、必ずしもすべてのケースで最適とは限りません。特に、問い合わせ内容がシンプルでパターン化されている場合には、従来のIVR(自動音声応答)で十分対応できるケースが多くあります。
IVRでは、あらかじめ用意された選択肢を顧客に案内し、電話のキー操作(プッシュ)で希望の項目を選んでもらう形式です。必要に応じて、該当するオペレーターにつなぐことも可能です。たとえば、「○○の案内が聞きたい」「△△の担当者につなげてほしい」といった単純な要望が中心であれば、AIを使わずともIVRだけでスムーズな対応ができます。
また、顧客側がオペレーターに早くつながりたい場合でも、操作に慣れていれば短時間で必要な選択肢を押して、速やかにオペレーターへつながることも可能です。
2.コストを抑えたい
IVRは、AI電話自動応答と比べて導入コストが低い傾向にあります。
IVRは音声認識や自然言語処理などの高度なAI技術を必要とせず、あらかじめ設定された選択肢を顧客に提示して対応するシンプルな仕組みです。そのため、システムの構築やメンテナンスにかかる費用も比較的抑えられ、運用コストもAI電話自動応答より少なくて済むケースが一般的です。
さらに、コスト面を重視する場合は「クラウド型IVR」の活用がおすすめです。クラウド型であれば、自社で専用サーバーを設置する必要がないため、初期投資を大幅に抑えられるほか、運用面でも柔軟性があります。
手軽にIVRを導入するなら「Voiper Dial」がおすすめ
シンプルな問い合わせが多く、コストを抑えつつ顧客対応の品質を高めたい場合には、IVRの導入が有効です。中でも、クラウド型CTIサービス「Voiper Dial」は、手軽にIVR機能を取り入れられるツールとして注目されています。
「Voiper Dial」は、録音機能やリアルタイムモニタリングを標準装備しており、ライセンス数やチャネル数に応じて基本料金が変わるシンプルな料金体系が特徴です。また、通話課金サービス「AliveLine」と組み合わせることで、「秒単位課金」に対応し、通話コストを大幅に削減することも可能です。
こうしたシステムは、問い合わせ対応を自動化したいけれど、AIのような高度な機能までは必要ないといったケースに適しています。人員の最適配置や対応品質の向上、さらには顧客満足度の向上も期待できます。
一方、AI電話自動応答は、より複雑で柔軟な対応が求められる場面で真価を発揮します。ただし、高度な音声認識・自然言語処理機能が必要なぶん、導入・運用の手間やコストはIVRよりも高くなる傾向があります。
最終的にどちらを選ぶべきかは、「自社の問い合わせの内容」「業務規模」「求める自動化のレベル」によって異なります。自社のニーズに応じて、適切なシステムを見極めることが大切です。