コールセンターのCPHとは?改善テクニックを解説

業務改善には「CPH(Call Per Hour:1時間あたりの処理件数)」を正しく理解し、自社の状況に合った施策を実行することが重要です。CPHは生産性を測る代表的な指標ですが、数値の追求だけに偏ると弊害も生じます。オペレーターが応対を急ぐあまり、顧客満足度が下がる懸念があるためです。
この記事では、まずCPHの基本を解説し、生産性が上がらない原因を整理します。そのうえで、応対品質を維持しながらCPHを改善するための9つの具体的な施策を紹介します。
CPHとは?

CPH(Call Per Hour)は、コールセンターの生産性を数値で把握するために用いられる重要なKPI(重要業績評価指標)のひとつです。1時間あたりに処理できる通話件数を示すため、オペレーターやチーム全体の稼働効率を確認するうえで役立ちます。
ただし、CPHの数値だけを見ても根本的な課題は特定できません。正しく改善につなげるには、平均処理時間(AHT:Average Handling Time)や応答率、一次解決率(FCR:First Call Resolution)といった関連指標も併せて理解することが欠かせません。
コールセンターのKPIについては、以下の記事でも詳しく解説しています。あわせてお読みください。
CPHの計算方法と関連指標(AHT・ATT・ACW)
CPHとは、オペレーター1人が1時間にどれだけの電話対応を完了できたかを示す指標です。生産性を把握するうえで基本となる数値であり、コールセンター運営に欠かせません。
CPHの計算方法
計算式はシンプルで、次のとおりです。
CPH=総処理コール数 ÷ 総稼働時間
例えば、あるオペレーターが8時間稼働し、50件の電話を処理した場合、CPHは「50件 ÷ 8時間 = 6.25」となります。
AHTとの関係
CPHと密接に関わるのが、1コールあたりの平均処理時間を示すAHT(Average Handling Time)です。AHTは、以下の2つの指標から構成されます。
-
ATT(Average Talk Time:平均通話時間)
顧客と実際に通話している時間 -
ACW(Average Call Work:平均後処理時間)
通話終了後に行う履歴入力や事務処理などの作業時間
計算式は次のとおりです。
AHT=ATT + ACW
AHTが短縮されれば、1時間に処理できる件数が増えるため、CPHは向上します。したがってCPH改善には、ATTやACW、またはその両方を効率化する取り組みが重要です。
CPHの目安は?
CPHの平均値には明確な基準があるわけではありません。案件の内容や顧客対応の難易度によって、大きく変わるためです。例えば、複雑な問題を扱うケースや慎重な対応が求められる場合は、1時間あたり1件程度が目安となることがあります。一方、簡単な問い合わせに案内するだけであれば、1時間に5件前後を処理することも可能です。
そのため、単純にCPHの数値が低いからといって、数値の引き上げだけを追求すると応対品質が損なわれる恐れがあります。重要なのは、案件の難易度や顧客層、オペレーターの経験など自社の状況を踏まえ、適切な目標値を設定することです。品質と効率のバランスを意識した目標設定が、持続的な改善につながります。
コールセンターのCPHが改善しない3つの要因
CPHが目標値に届かないときの原因は、オペレーター個人のスキルだけでなく、業務プロセスやシステムなど、さまざまな要因が複雑に絡み合っています。
要因①オペレーターのスキル・知識不足
CPHが上がらない主な要因のひとつは、オペレーターのスキルや知識の不足です。タイピングが遅ければACW(平均後処理時間)が長引き、製品知識が不十分であれば回答に時間がかかり、ATT(平均通話時間)が伸びてしまいます。さらに、保留の多発やSV(スーパーバイザー)へのエスカレーションが頻繁に起こるのも、知識不足によるものが少なくありません。
また、評価制度が不透明であったり、業務負荷が過度に高い場合、オペレーターのモチベーションが下がります。その結果、応対品質の低下を招き、CPHの悪化へとつながる悪循環が生じます。したがって、教育や研修によるスキル向上に加え、適切な評価制度や負荷管理を整備することが欠かせません。
要因②非効率な業務フローとナレッジ不足
オペレーターが能力を十分に発揮できない背景には、非効率な業務環境やナレッジの不足が隠れていることがあります。代表的なのが、FAQやマニュアルが整備されていない、あるいは内容が古く更新されていないケースです。情報を探すのに時間がかかれば、ATTやACWが長くなり、CPHを圧迫します。
さらに、SV(スーパーバイザー)へのエスカレーションルールが曖昧だと判断を待つ時間が増え、担当者への引き継ぎがスムーズに行えない場合も業務の停滞につながります。こうしたナレッジや業務フローの問題は、オペレーター個人の努力では解決できません。組織として情報の更新体制やルールを整備することが、CPH改善に直結します。
情報の属人化が進み、特定のオペレーターしか対応できない状況も改善すべき課題といえます。
要因③ツールの活用不足
現代のコールセンターでは、適切なシステムの導入と活用が生産性を大きく左右します。CTI(Computer Telephony Integration)システムが導入されていない場合、電話機能と顧客情報が分断され、着信のたびに手作業で情報を検索する必要が生じます。その結果、対応のたびにタイムロスが発生し、業務効率が大きく低下します。
一方で、システムを導入していても機能を十分に活用できていないケースも少なくありません。多くのCTIシステムには、通話内容を分析する機能や、オペレーターの稼働状況を可視化するレポート機能が備わっています。これらのデータを活用して課題を特定し、改善策を実行する仕組みを構築できなければ、システムは本来の価値を発揮できません。逆に、適切に運用すれば応対品質の向上やCPH改善にも直結します。
CPHを改善するための施策

CPHを改善するには、単に通話時間を短縮するだけでは不十分です。重要なのは、応対品質を維持しながら効率的な対応を実現し、顧客満足度の向上にもつなげることです。
ここでは、オペレーターのスキル強化、業務環境やプロセスの最適化、システムやツールの活用という3つの視点から、CPHを高めるための具体的な9つの施策を紹介します。
施策①オペレーターのスキル向上
オペレーターのスキルを向上させる施策は、以下の3つです。
- 定期的な研修の実施
- トークスクリプトの改善とロープレ
- 通話録音を活用した具体的なコーチング
オペレーターのスキル向上は、CPH改善の基本です。まずはタイピング速度を高める研修や、自社製品・サービスに関する知識を深める勉強会を定期的に実施しましょう。知識が充実すれば説明がスムーズになり、ATTの短縮につながります。
次に取り組みたいのが、トークスクリプトの改善とロールプレイングです。トークスクリプトは応対品質を標準化し、ATTを短縮するための有効な手段です。よくある質問への回答パターンを整備し、常に最新の情報に更新することが重要です。さらに、スクリプトを活用したロールプレイングを繰り返せば、オペレーターは自信を持って対応できるようになります。
加えて、優れたオペレーターの通話録音を使ったコーチングも効果的です。CPHが高いオペレーターの通話録音は実践的な教材であり、話の進め方や質問への切り返し方を具体的に学べます。分析した内容を共有し、個別のフィードバックを行うことで、一人ひとりの課題に合わせた効果的なスキルアップが期待できます。
施策②業務プロセスの最適化
業務環境とプロセスを最適化する施策は、以下の3つです。
- FAQシステムの構築と自己解決の促進
- マニュアルの常時最新化と情報の属人化防止
- エスカレーションルールの明確化
まずはFAQシステムを整備し、オペレーターが不明点をすぐに解決できる環境をつくりましょう。よくある質問と回答を体系的に整理し、検索しやすい仕組みにすれば、保留やSV(スーパーバイザー)へのエスカレーションが減少します。その結果、ATTとACWの双方を短縮でき、顧客対応もスムーズになります。
次に重要なのは、マニュアルを常に最新の状態に保つことです。業務マニュアルや応対フローは、一度作成して終わりではなく、サービスやキャンペーンの開始、業務ルールの変更などに合わせて速やかに更新する必要があります。情報が常に最新かつ一元化されていれば、オペレーター間の知識の差がなくなり、応対品質の標準化と効率化につながります。
さらに、エスカレーションルールを明確にすることも欠かせません。オペレーターが自分で判断できない問題に直面したとき、誰にどのような手順で相談すべきかが明確であれば、判断に迷う時間が減ります。基準やフローが整っていれば、オペレーターが対応を抱え込んだり、SVを探して待ったりする無駄がなくなり、問題解決までの時間を大幅に短縮できます。
施策③ツールの活用
ツール活用の施策は、以下の3つです。
- CTIシステムの導入
- プレディクティブコールの導入
- AI機能の活用
最初に取り組むべきは、CTI(Computer Telephony Integration)システムの導入です。電話とコンピューターを連携させるこの仕組みには、業務効率化に役立つ多くの機能が備わっています。例えば、着信時に顧客情報が自動表示されるため、本人確認や情報検索にかかる時間を削減でき、ATTの短縮につながります。さらに、顧客情報を見ながら通話できるため、パーソナライズされた質の高い応対が可能になります。
次に検討したいのが、アウトバウンド業務におけるプレディクティブコールの活用です。システムが自動でリストに発信し、つながった電話だけをオペレーターにつなぐため、発信操作や呼び出し中の待ち時間がなくなります。その結果、オペレーターは会話に集中でき、架電効率が大幅に向上します。アウトバウンド中心の業務では、CPH改善に直結する有効な手段です。
最後に、AI機能の導入です。近年は通話内容の自動文字起こしや要約機能が普及し、ACWの削減に大きな効果を発揮しています。オペレーターはゼロから対応履歴を作成する必要がなくなり、AIが生成した要約を確認・修正するだけで済むため、後処理の負担を大幅に軽減できます。AIを適切に活用することで、効率と品質を両立したコールセンター運営が実現します。
コールセンターのシステムに関しては、以下の記事でも詳しく解説しています。あわせてお読みください。
CPHの改善で陥りがちな注意点
CPHを改善するうえで最も注意すべき点は、数字だけを追い求めないことです。CPHの向上を目的化してしまうと、オペレーターは1件でも多く処理しようと顧客の話を十分に聞かずに通話を切り上げたり、後処理を簡略化したりする可能性があります。こうした対応は顧客満足度の低下を招きます。
一時的にCPHが上がったように見えても、問題が解決していなければ再度問い合わせが発生し、結果的に業務量が増加してしまいます。これは本来の効率化とは逆効果です。
CPHはあくまで生産性を測るための指標のひとつです。応対品質や顧客満足度など他の重要指標と併せて総合的に評価することで、コールセンターの健全な運営につながります。
コールセンターのCPH改善はアライブネットにお任せください

本記事では、CPHを改善するための具体的な施策を紹介しました。ただし、本当の意味での生産性向上は、テクニックの積み重ねだけでは実現できません。
アライブネットは、電話業務に関する課題を解決する「コールソリューション企業」として、CPH改善のその先を見据えた提案を行っています。クラウド型CTIシステム「Voiper Dial」には、プレディクティブ発信やCRM(顧客管理システム)との連携といった充実の機能を搭載。業務効率化を実現します。
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