固定電話は廃止される?デメリットや影響をわかりやすく解説

「固定電話がなくなる」というニュースを耳にし、不安を感じている方も多いのではないでしょうか。
「今使っている固定電話が突然使えなくなるの?」
「IP電話への移行って具体的にどういうこと?」
このような疑問を持っている方も少なくありません。特に、家族や友人との連絡手段として固定電話を利用している方や、企業で業務上欠かせないツールとして活用している方にとっては、大きな関心事です。
NTT東日本・西日本では、2024年から従来のアナログ回線(PSTN)やISDN回線を段階的に廃止し、インターネット回線を利用したIP網(IP電話)へと順次移行しています。ただし、これによって「固定電話そのものが完全に使えなくなる」わけではありません。通信インフラが切り替わることで、従来の回線を利用した方式からIP方式への移行が必要になるというのが実際の内容です。
本記事では、固定電話回線がIP化される背景や今後のスケジュール、利用者への影響、移行に伴うメリットとデメリット、そして今後利用できる代替手段や注意点について、わかりやすく解説します。
固定電話は廃止される?

固定電話の利用者は年々減少しており、それに伴って通信インフラの見直しが進められています。NTTは2024年1月から、従来のアナログ回線やISDN回線から、インターネット技術を活用したIP回線(IP網)への移行を段階的に開始しました。
この移行により、従来の電話回線は徐々に廃止されますが、現在利用している電話番号は変わらず、これまで通り固定電話で通話が可能です。移行後は通話の仕組みがIP回線を利用する形に変わるだけで、利用方法は大きく変わりません。
この記事では、固定電話の契約数が減少している背景や、IP網移行の目的と利用者への影響、移行にあたって知っておくべき注意点などを、わかりやすく解説します。
固定電話の契約数が減少している理由
固定電話の契約数が年々減少している背景には、社会の変化や通信技術の進化が大きく関係しています。
まず、携帯電話やスマートフォンの普及により、家庭や企業で固定電話を利用する機会が大幅に減少しました。個人間の通話はもちろん、企業活動においても携帯電話やインターネット通話が主流となり、固定電話の必要性が低下しています。
次に、通信技術の進化も大きな要因です。高速インターネット回線の普及や、クラウドPBX(クラウド上で構築する電話交換システム)などの新しいサービスの登場により、IP電話やオンライン会議ツールが一般化しました。その結果、従来型の固定電話を利用する場面が少なくなっています。
さらに、コロナ禍をきっかけとしたリモートワークの普及により、オフィスの固定電話を廃止し、クラウド型電話システムやIP電話に切り替える企業が増えています。物理的な電話機や回線を必要としないため、場所を選ばず通話ができる利便性が評価されています。
このような社会的背景に加え、旧式の通信設備の維持コストの高さも固定電話縮小の要因です。従来の電話サービスでは、中継交換機や信号交換機といったハードウェアが必要でしたが、これらの設備は老朽化が進んでおり、修理や管理に多くの費用や手間がかかります。故障リスクが高まり、経済的・技術的な負担が増えていることから、電話サービスをIP回線(インターネットを利用した仕組み)に移行する動きが加速しています。
IP網移行の影響と今後の見通し
固定電話のIP網移行が進むことで、利用者や企業にはいくつかの影響があります。まず、一部のサービスが終了します。具体的には、NTTが提供する「INSネット64」「INSネット64・ライト」「INSネット1500」といったISDNサービスが、2028年までに順次終了する予定です。これらのサービスを利用している場合は、別の通信手段に切り替える必要があります。
次に、通話料金が全国一律に変更されました。2024年1月以降、固定電話同士の通話料金は3分あたり9.35円となっています。携帯電話やIP電話などへの通話料金は異なるものの、地域による料金差はなくなりました。
さらに、固定電話のIP化が進むことで、企業ではクラウドPBXの導入が増えています。クラウドPBXはインターネット回線を利用して電話交換機の機能をクラウド上で提供するサービスで、オフィスの外でも会社の代表番号を使って発着信ができるため、テレワークや多拠点での業務に対応しやすくなります。
特にコールセンターでは、クラウドPBXを含む「Voiper Dial」などのCTIシステムが導入されるケースが増えています。これにより、通話の自動記録や着信の自動振り分けが可能になり、電話対応の効率化とコスト削減を同時に実現できるようになっています。
固定電話廃止のデメリット

固定電話の解約は「電話加入権」を手放すことであり、一度解約すると、同じ番号で契約を再開することはできません。
ほかにも、固定電話を廃止することで、以下のようなデメリットが生じます。
デメリット①法人利用に影響が出る
企業が固定電話を廃止すると、下表のような影響が考えられます。
影響 | 詳細 |
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法人用の銀行口座開設が不利になる | 多くの銀行では、法人の銀行口座を開設する際に固定電話番号の記載を求めています。固定電話がない場合、口座開設の審査が通りにくくなる可能性があります。 |
社会的信用の低下 | 固定電話の有無は、企業の信頼性を示す要素の一つとされています。特にBtoB取引では、固定電話を持たない企業は信用リスクが高いと判断されることもあります。 |
取引先からの印象が悪くなる | 固定電話のない企業は、詐欺業者や短期間で消える企業と疑われることがあるため、取引先との信頼関係に影響を及ぼす可能性があります。 |
デメリット②通話料金が高くなる可能性がある
固定電話を廃止すると、通話料金にも下表のような影響が出ます。
影響 | 詳細 |
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携帯電話の通話料金が高くなる可能性がある | 固定電話と比べて、携帯電話の通話料金は高めに設定されている場合が多いため、長時間の通話が増えると通信費がかさむ可能性があります。 |
企業の通信コストが増加 | 企業が固定電話を廃止すると、従業員の個人携帯電話を業務で使用するケースが増えます。しかし、個人の通話料金負担が増えるため、補助制度の導入などが必要になります。 |
その点、格安IP電話回線サービス「AliveLine」の「秒課金通話サービス」であれば、固定電話通話料は0.06円であり、携帯電話よりも大幅に通話料金を削減できます。
デメリット③FAXが利用できなくなる
固定電話を廃止すると、FAXの送受信にも影響が出ます。
影響 | 詳細 |
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従来のFAX機器が使えなくなる | 多くの企業では、固定電話回線を利用してFAXを送受信しています。固定電話を解約すると、従来のFAX機器が使えなくなります。 |
インターネットFAXの導入が必要 | 固定電話を廃止しても、インターネットFAXを導入すればFAXの送受信は可能です。クラウド型のFAXサービスを利用すれば、スマートフォンやPCからもFAXを管理できるようになります。 |
デメリット④連絡先を変更しなければならない
また、固定電話を解約すると、登録している連絡先情報をすべて変更する必要が出ます。
影響 | 詳細 |
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クレジットカードや保険の登録情報変更 | 固定電話番号を登録しているクレジットカードや保険の契約情報をすべて変更する必要があります。 |
ホームページや名刺の修正が必要 | 企業の場合、名刺や会社のWebサイトに記載されている固定電話番号の修正が必要です。変更を忘れると、顧客や取引先からの問い合わせが減る可能性があります。 |
取引先への事前通知が必要 | 重要な取引先には、固定電話廃止の連絡を事前に行い、新しい連絡手段を共有することが大切です。 |
ただし、オフィスに設置している固定電話を廃止しなくても、従来どおり利用することは可能です。
固定電話廃止のメリット
固定電話の廃止にはデメリットがある一方で、企業や個人にとってのメリットも存在します。特に、通信コストの削減や業務効率の向上が期待できるため、状況に応じて固定電話の廃止を前向きに検討してもよいでしょう。
以下で、固定電話を廃止することで得られるメリットを紹介します。
メリット①固定費を削減できる
まず、固定電話を廃止することで通信にかかる固定費を削減できます。
メリット | 詳細 |
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基本料金が不要になる | 固定電話を契約していると、毎月の基本料金が発生します。特に法人向けのプランでは、契約プランによっては高額な固定費がかかる場合があります。 |
使用頻度の低い電話回線を整理できる | 部署ごとに固定電話を設置している企業もありますが、実際にはほとんど使用されていない回線もあります。不要な回線を廃止することで、無駄なコストを削減できます。 |
クラウドPBXなどの導入でさらにコストダウン | 固定電話の代替手段として、クラウドPBXやIP電話を導入すれば、従来よりも低コストで運用可能です。 |
IP電話回線サービス「AliveLine」は、秒課金プランの場合、固定電話の通話料は0.06円。通話料金を最大で65%削減可能です。
メリット②迷惑電話が減る
固定電話を解約することで、下表のように営業電話や迷惑電話が減少し、業務の効率が向上します。
メリット | 詳細 |
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営業電話や詐欺電話が減る | 固定電話には営業電話や迷惑電話がかかってくることがあります。これらの不要な電話対応がなくなることで、業務の負担が軽減されます。 |
重要な電話を逃す数が減る | 企業の場合、固定電話はオフィスにいる人しか対応できないことがありますが、クラウドPBXやIP電話を導入すれば、外回りやリモートワーク中でも対応可能になります。 |
社内の電話対応の負担が軽減される | 営業など一部の部署では、固定電話の対応に時間を取られてしまう場合があります。固定電話をなくすことで、必要な電話のみを適切な担当者が受けられるようになり、業務の効率が向上します。 |
メリット③電話機があったスペースを有効活用できる
固定電話を廃止することでスペースが生まれ、オフィスのレイアウトを柔軟に変更できるようになります。
メリット | 詳細 |
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デスク周りがスッキリする | 固定電話の設置が不要になることで、デスク周りの配線を整理しやすくなります。 |
レイアウト変更の自由度が向上 | 電話回線の位置に依存せずに、オフィスのレイアウトを柔軟に変更できるようになります。 |
フリーアドレスを導入しやすくなる | 固定電話をなくすことで、社員が自由に座席を選べるフリーアドレス制の導入がスムーズになります。 |
固定電話廃止後の代替手段

ここでは、固定電話廃止後の主要な代替手段について解説します。
代替手段①IP電話・クラウドPBXを活用する
固定電話に代わる手段として、IP電話やクラウドPBXを導入する企業が増えています。IP電話はインターネット回線を利用して通話を行うサービスで、従来の固定電話に比べて通話料金を安く抑えられる点が大きなメリットです。
一方、クラウドPBXは従来オフィスに設置していた電話交換機の機能をクラウド上で提供するサービスです。これを導入すれば、社員が自分のスマートフォンやパソコンを業務用電話として利用できるようになり、固定電話機を必ずしも設置する必要がなくなります。さらに、オフィスの外からでも代表番号を使った発着信が可能になり、電話回線や機器の維持コストを削減できるほか、スマートフォンとの連携によって業務効率も向上します。
CTIシステムの「Voiper Dial」を活用すれば、通話の自動録音やリアルタイムモニタリングといった機能が利用でき、コールセンターや営業部門での通話業務をさらに効率化できます。これにより、オペレーターは安心して対応でき、管理者は品質向上に向けたサポートが行いやすくなります。
代替手段②インターネットFAXを導入する
固定電話の廃止に伴い、これまでのようにFAXが利用できなくなることを懸念する企業も少なくありません。そのような場合の代替手段として、「インターネットFAX」の導入が有効です。
インターネットFAXは、インターネット回線を利用してFAXの送受信を行うサービスです。従来のように固定電話回線を必要とせず、スマートフォンやパソコンから直接FAXを送ったり受け取ったりできるため、場所を選ばず利用できます。これにより、外出先やテレワーク中でもFAX業務を行えるようになります。
企業がインターネットFAXを導入すると、固定電話回線の維持が不要になるほか、紙やトナーを使わずにデータでの送受信が可能になるため、印刷コストや保管スペースを削減できます。業務でFAXを多く使用している企業が固定電話を廃止する場合には、インターネットFAXを取り入れることで、従来の業務フローを維持しながらコスト削減や利便性向上を図ることができます。
代替手段③スマートフォンとの連携
固定電話を廃止した場合でも、スマートフォンを活用すれば業務を継続できます。近年では、社員一人ひとりに会社支給のスマートフォンを配布し、業務用電話として利用する企業が増えています。LINE、Zoom、Microsoft Teamsといった通話アプリを利用すれば、インターネット回線を通じて音声通話が可能となり、通話料をかけずに連絡を取り合えるのが大きなメリットです。
また、BYOD(Bring Your Own Device)という形で、社員が自分のスマートフォンを業務用に活用する方法もあります。この仕組みを導入すれば、会社側が端末を新たに購入する必要がなく、コストを抑えながら固定電話に代わる通信手段を確保できます。業務用アプリやセキュリティ管理ツールを導入すれば、プライベート利用と業務利用を安全に分けることも可能です。
こうしたスマートフォンの活用は、オフィス外での対応やテレワークの普及が進む現代において、特に有効な方法です。外出先や自宅からでも会社の連絡体制を維持できるため、固定電話の廃止後も業務に支障をきたしにくくなります。
固定電話廃止に際しての注意点
固定電話はこれまで主要な連絡手段として使われてきたため、高齢者の家庭や企業では多く導入されています。ここでは、固定電話の廃止に伴う注意点とその対策について解説します。
注意点①便乗商法や詐欺
固定電話の廃止に関連して、「固定電話が完全になくなる」「すぐに新しい回線に切り替えなければ使えなくなる」といった不安を煽る便乗商法や詐欺が報告されています。
よくある手口の一つが、虚偽の説明によって利用者を急かすケースです。固定電話はIP網への移行が進められており、一部のISDNサービスなどが順次終了するのは事実です。しかし、移行後も電話番号は引き続き利用でき、すぐに使えなくなることはありません。それにもかかわらず、「今すぐ手続きしないと通話できなくなる」と誤解させ、契約を急がせる業者が存在します。
もう一つの手口は、高額な工事費を請求するケースです。固定電話をIP回線に移行する際、特別な大規模工事は基本的に必要ありません。それにもかかわらず、一部の業者が「回線工事が不可欠」と偽り、法外な費用を請求する事例が確認されています。
さらに、固定電話の代替手段として、実際には必要のない高額なIP電話やクラウドPBXプランを契約させるケースもあります。こうした被害を防ぐには、訪問営業や電話勧誘の内容を鵜呑みにせず、契約前に社内で検討し、NTTや信頼できる通信事業者に直接確認することが大切です。
注意点②解約前の準備
固定電話を廃止する前には、いくつかの準備を整えておくことで、移行後のトラブルを防ぎ、スムーズに新しい通信環境へ切り替えられます。
まず、重要な連絡先の確認と変更が必要です。クレジットカード会社や銀行、保険会社などの契約に固定電話番号を登録している場合、そのままでは連絡が取れなくなる可能性があります。事前に連絡先として登録されている電話番号を確認し、必要に応じて携帯電話番号や新たなIP電話番号へ変更しておきましょう。
次に、代替手段を確保することが重要です。固定電話の廃止後もスムーズに業務や日常の連絡を行えるよう、IP電話やクラウドPBX、スマートフォンを利用した通話環境を準備しておくことが推奨されます。企業の場合は、代表番号を引き継げるサービスを利用すれば、取引先との連絡に支障をきたさずに移行できます。
また、移行前に現在の通信契約や回線状況を確認し、新しいサービスとの互換性や必要な手続きがないかを把握しておくと、切り替え時の混乱を避けられます。
注意点③企業の場合の注意点
下表に企業向けの対応策をまとめました。
対応策 | 詳細 |
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クラウドPBXやIP電話の導入 | 固定電話の代わりに、クラウド型のPBXやIP電話を活用することで、コスト削減と業務効率化を実現できます。 |
社内の連絡手段を整理 | 社員のスマートフォン利用を推奨するなど、新たな社内ルールを策定することで、スムーズに移行できます。 |
まとめ
固定電話そのものが完全に廃止されるわけではありませんが、2024年1月1日以降、NTTが提供する従来のアナログ回線やISDN回線は段階的に終了し、インターネット技術を利用した「IP網」と呼ばれる新しい通信方式へ移行が進んでいます。
この移行により、今後も固定電話を使い続けられるものの、個人や企業の利用環境に一定の影響が出ることは避けられません。ただし、電話が突然使えなくなるわけではなく、事前に代替手段を用意すればスムーズに移行できます。
特に企業の場合は、クラウド型CTI「Voiper Dial」の導入がおすすめです。固定電話を廃止しても代表番号での発着信やコールセンター業務を継続でき、さらに通話コストを削減できます。また、通信費を可能な限り抑えたい場合には、業界最安値を目指す「AliveLine」を活用する方法もあります。
固定電話のIP網移行は避けられない流れであるため、自社や家庭の利用状況に合った通信手段を早めに選定し、移行後も快適で安定した通話環境を確保できるよう準備しておくことが大切です。