オムニチャネルとは?簡単にわかる具体例やメリットを解説
「売上を伸ばすためにオムニチャネル化を目指したいが、どうすればいいのか簡単に知りたい」と悩んでいませんか?
オムニチャネルとは、すべてのチャネルを連携させて顧客に一貫した体験を提供する戦略です。言葉は知っていても、具体的な意味やメリットがわからず、導入をためらっている方もいるでしょう。
今回の記事では、オムニチャネルの基本から具体例、導入のメリットや進め方までを簡単に解説します。
オムニチャネルとは?

オムニチャネルの「オムニ」は、「すべて」「あらゆる」を意味するラテン語です。「チャネル」とは、顧客と企業との接点のことです。つまりオムニチャネルとは、実店舗、ECサイト、スマートフォンアプリ、コールセンター(電話窓口)など、企業がもつすべてのチャネルを連携・統合し、顧客に一貫性のあるシームレスな購買体験を提供するマーケティング戦略を指します。
簡単にいうと、「顧客がどのチャネルを利用しても、まるでひとつの店舗で買い物をしているかのように感じられる状態」を目指す考え方です。例えば、顧客がスマートフォンアプリで気になった商品を、会社の昼休みにECサイトで詳しく調べ、仕事帰りに実店舗で実物を確認して購入する、といった一連の行動をスムーズに実現するのがオムニチャネルです。
オムニチャネルの具体例
言葉の定義だけでは、オムニチャネルを具体的にイメージするのは難しいかもしれません。ここでは、実際にオムニチャネル戦略を成功させている企業の事例を見ていきましょう。
【ユニクロ】
ユニクロは、オムニチャネル戦略の代表的な成功事例です。例えば、ユニクロの公式アプリを使えば、ECサイトで注文した商品を最寄りの店舗で受け取れます。これにより、顧客は送料を節約できるうえ、好きなタイミングで商品を受け取れるのです。
また、ECサイトで購入した商品の返品や交換を、実店舗の窓口で受け付けています。オンラインとオフラインの垣根をなくし、顧客にとって最も都合の良い方法を選べるようにしている点が、優れたオムニチャネル戦略といえます。
【無印良品】
無印良品は、専用アプリ「MUJI passport」を軸にしたオムニチャネル戦略を展開しています。このアプリを使えば、実店舗の在庫状況をリアルタイムで確認できます。「店舗に行ったのに在庫がなかった」という顧客の不満を解消しています。
また、店舗とオンラインストアの購買履歴が一元管理されており、顧客一人ひとりに合わせたおすすめ商品やクーポンが配信されます。アプリが会員証の役割も果たし、どの店舗、どのチャネルで買い物をしてもマイル(ポイント)が貯まる仕組みは、顧客の継続的な利用を促進する巧みな戦略です。
ほかにも、店頭商品のQRコードをスマートフォンで読み取ると、オンラインストアの商品詳細ページやレビューを確認できる仕組みも、オムニチャネルの代表的な例です。
オムニチャネル化が重要視される理由
なぜ今、多くの企業がオムニチャネル化に注目しているのでしょうか。その背景には、スマートフォンの普及による顧客の購買行動の変化があります。現代の顧客は、店舗に足を運ぶ前にSNSで口コミを調べ、ECサイトで価格を比較し、動画サイトでレビューを見るなど、複数の情報源を駆使して購買を決定します。
このような複雑な購買行動に対応するため、企業はすべてのチャネルを連携させ、顧客がいつでもどこでもストレスなく情報を得て、購入できる仕組みを整える必要に迫られているのです。
また、IT技術の進化により、複数のチャネルを横断する顧客の行動データを収集・分析できるようになりました。データを分析すれば、顧客のニーズをより深く理解し、一人ひとりに合わせた最適なアプローチが可能になります。
オムニチャネル化を放置する2つのリスク
オムニチャネル化の流れに乗り遅れると、企業はどのようなリスクを負うのでしょうか。ここでは、チャネル間の連携が取れていない場合に起こりうる、2つの大きなリスクを解説します。
リスク①顧客満足度の低下
各チャネルが独立して運営されていると、顧客に一貫性のない対応をしてしまい、顧客満足度の低下を招きます。例えば、以下のようなケースが考えられます。
- 以前メールで問い合わせた内容が共有されておらず、コールセンターに電話したら再度同じ説明を求められた。
- ECサイト限定のキャンペーンについて実店舗で質問したら、「店舗ではわかりません」と返された。
- 店舗には在庫があるのに、ECサイト上では「在庫切れ」と表示されている。
このような体験は、顧客に「別の会社と話しているようだ」という不信感を与え、リピート購入の機会を失う原因になります。
リスク②機会損失の発生
チャネル間の情報が分断されていると、本来得られたはずの販売機会を逃してしまいます。
例えば、ある顧客が実店舗とECサイトの両方で買い物をしているのに、それぞれの購買履歴が別々に管理されていたとしましょう。その場合、企業は顧客の本当の好みや購買パターンを正確に把握できません。結果として、顧客が興味をもつであろう新商品の案内を送れなかったり、的外れな広告を表示してしまったりと、効果的なアプローチができず機会損失につながるのです。
すべてのチャネル情報が統合されていれば、顧客の行動に基づいた適切なフォローアップや、関連商品の提案(アップセル・クロスセル)が可能になります。
オムニチャネルの関連用語
オムニチャネルを理解するうえで、いくつか似たようなマーケティング用語が存在します。それぞれの言葉が指す意味や、オムニチャネルとの違いを正しく理解しておきましょう。
①シングルチャネル
シングルチャネルとは、企業と顧客との接点が実店舗のみ、あるいはECサイトのみといったように、ひとつしかない状態のことです。最もシンプルな販売形態ですが、顧客との接点が限られるため、アプローチできる顧客層も限定されます。
②マルチチャネル
マルチチャネルは、実店舗、ECサイト、アプリなど、企業が複数のチャネルをもち、それぞれ独立して顧客にアプローチする状態のことです。シングルチャネルよりも多くの顧客接点をもてますが、各チャネルは連携しておらず、在庫情報や顧客データも別々に管理されています。
③クロスチャネル
クロスチャネルは、マルチチャネルがさらに進化した状態を指します。複数のチャネルをもつ点ではマルチチャネルと同じです。しかし、在庫情報や商品データが各チャネル間で連携されている点が異なります。
例えば、「ECサイトで注文した商品を、店舗で受け取る」といった体験は、クロスチャネルで実現します。ここからさらに、在庫情報だけでなく顧客データも含めてすべてのチャネルで一元管理し、顧客視点でシームレスに快適な体験の提供を目指すのがオムニチャネルです。
④O2O
O2Oとは「Online to Offline」の略で、オンライン(Webサイトやアプリ)からオフライン(実店舗)へと顧客を誘導する施策を指します。例えば、スマートフォンのアプリで実店舗で使えるクーポンを配信したり、Webサイトで新商品の情報を告知して来店を促したりするのがO2Oの代表例です。
オムニチャネルがすべてのチャネルを連携させて全体の顧客体験を向上させる戦略であるのに対し、O2Oはオンラインからオフラインへの一方向の流れに特化した施策である点が異なります。
オムニチャネル化で得られる3つのメリット

オムニチャネル化に戦略的に取り組むことで、企業はどのようなメリットを得られるのでしょうか。ここでは、代表的な3つのメリットを解説します。
メリット①顧客満足度の向上
オムニチャネル化の最大のメリットは、顧客満足度の向上です。すべてのチャネルが連携することで、顧客は自身のライフスタイルや都合に合わせ、最も便利な方法で買い物や情報収集ができます。
例えば、店舗でのトラブルについてコールセンターに電話で問い合わせた際に、オペレーターが顧客の購入履歴を即座に確認できれば、説明の手間が省け、スムーズな問題解決につながります。このようなストレスのない体験は、企業への信頼感を高め、顧客満足度を大きく向上させるのです。
メリット②機会損失の防止
各チャネルが連携することで、販売機会の損失を防げます。例えば、「ショールーミング」という言葉があります。これは、顧客が実店舗で商品を実際に確認し、購入は価格の安いECサイトで行う行動です。チャネルが分断されていると、これは単なる機会損失で終わってしまいます。
しかし、オムニチャネル化されていれば、店舗スタッフが自社のECサイトへ誘導したり、その場でECサイトから注文を受け付けたりと、顧客を他社に流出させることなく販売機会を確保できます。
メリット③顧客に合わせたアプローチ
すべてのチャネルの顧客データや行動履歴を一元管理することで、顧客一人ひとりに対し、よりパーソナライズされたアプローチが可能になります。例えば、ある顧客がECサイトで特定の商品を閲覧していたら、後日その顧客が店舗を訪れた際に、店舗スタッフの端末にその情報が通知される、といった仕組みも構築可能です。これにより、スタッフは顧客の興味に合わせた的確な接客ができます。
顧客の行動に基づいた一貫性のある情報提供は、顧客に「自分のことを理解してくれている」という特別感を与え、購買意欲を高めます。
オムニチャネル化を進める方法を4ステップで解説
オムニチャネル化は、どのように進めていけばよいのでしょうか。ここでは、オムニチャネル戦略を成功させるための基本的な4つのステップを解説します。
ステップ①オムニチャネル化の方針を決める
まず、自社がオムニチャネル化によって「どのような顧客体験を提供したいのか」「何を目指すのか」という全体の方針を決定します。この方針決定は、マーケティング部門だけで行うものではありません。店舗運営、EC、営業、カスタマーサポート、システム開発など、関連するすべての部署が参加し、会社全体としての方針を共有する必要があります。
全社的な共通認識がなければ、後のデータ連携やシステム統合で部門間の対立が起こり、計画が頓挫する可能性があります。
ステップ②カスタマージャーニーマップを作成する
次に、顧客の視点に立って、購買行動のプロセスを可視化します。そのために有効なのが「カスタマージャーニーマップ」の作成です。カスタマージャーニーマップとは、顧客が商品を認知してから購入・利用後に至るまでの一連のプロセスを「旅」に見立て、各段階での行動や思考、感情、そして企業との接点を時系列でまとめたものです。
このマップを作成することで、現状の顧客体験の課題や、どのチャネルでどのようなアプローチが有効かが見えてきます。
ステップ③各チャネルのデータ連携やシステム統合を行う
カスタマージャーニーマップで明らかになった理想の顧客体験を実現するため、各チャネルでばらばらに管理されているデータを連携・統合する工程が必要です。具体的には、顧客情報、購買履歴、ポイント情報、在庫情報などを一元管理するためのシステム基盤を構築します。
多くの場合、CRM(顧客管理システム)やCDP(カスタマーデータプラットフォーム)といったツールがその中核を担います。 CRMは、氏名や連絡先、購入履歴といった顧客との関係性に関する情報を管理するシステムです。
一方CDPは、Webサイトの閲覧履歴や実店舗の購買データなど、社内外に散在するあらゆる顧客データを収集・統合するためのデータ基盤のことです。これらのツールを連携させることで、より深い顧客理解が可能になります。
ステップ④効果検証する
システムの統合が完了したら、実際にオムニチャネル施策を開始し、その効果を検証します。ステップ②で作成したカスタマージャーニーマップで描いた理想の顧客行動と、実際の顧客の動きを比較分析することが重要です。「顧客満足度は向上したか」「LTV(顧客生涯価値)は伸びているか」といったKPI(重要業績評価指標)を定期的に測定します。LTVとは、一人の顧客が取引を開始してから終了するまでの間に、自社にもたらす利益の総額を示す指標です。
これらの数値を分析し、想定外の動きがあれば軌道修正します。オムニチャネル化は一度で完成するものではなく、効果検証と改善を繰り返すことで、その精度を高めていくのです。
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今回の記事では、オムニチャネルの基本的な考え方から、具体的な進め方までを解説しました。
オムニチャネル戦略において、ECサイトやアプリといったデジタルチャネルの強化が注目されがちですが、顧客が疑問や不安を感じたときに直接相談できる「電話(コールセンター)」チャネルの役割は、顧客との信頼関係を築く上で欠かせません。
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アライブネットのクラウド型CTIシステム「Voiper Dial」は、電話チャネルを他のチャネルと強力に連携させるための機能が豊富です。例えば、CRM連携機能を使えば、ECサイトでの購入履歴や閲覧商品といったデータを、電話着信時にオペレーターのPC画面へ自動でポップアップ表示します。
これによりオペレーターは、顧客がどの商品に興味をもっているかを瞬時に把握し、「先日ご覧になっていた〇〇の件ですね」といった、一人ひとりに合わせたパーソナライズされた応対が可能です。さらに、問い合わせ内容に応じて専門知識をもつオペレーターへ自動で振り分けるACD(自動着信分配)機能も、オムニチャネル戦略を支えます。すべてのチャネルのデータと連携させることで、より高度でスムーズな顧客対応を実現します。
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