INS(ISDN)回線とは?サービス終了の背景や代替手段を解説

「自社で使うINS回線がまもなく使えなくなると聞き、不安だ」と感じていませんか。
NTT東日本・西日本が提供するINS回線は、2028年12月31日をもってサービスを終了します。
現在もINS回線を利用する企業のシステム担当者は、電話やFAXなどの代替手段を選び、計画的に移行を進める必要があります。今回の移行は単なるインフラ更新ではなく、通信コストの削減や業務効率化を進める好機です。
今回の記事では、INS回線の基本的な仕組みからサービス終了の背景、現在主流の光回線との違い、そして最適な代替サービスまで解説します。
INS(ISDN)回線とは?

INS回線とは、NTT東日本・西日本が提供しているISDNサービス「INSネット」の呼称です。一般的に「INS回線」と「ISDN回線」は、ほぼ同じ意味の言葉として使われています。
INS回線は、1本のメタル回線で2つの通信チャネルを同時に利用できるデジタル回線です。
例えば、片方のチャネルで通話をしながら、もう片方のチャネルでFAXを送信できます。これは、INS回線が「通話モード」と「ディジタル通信モード」の2つのモードを構える構造によって実現しました。
高速インターネットが普及する前、音声とデータを1本で両立できる数少ない手段として多くの企業に採用されています。
POS(販売時点情報管理)システムや企業の警備システム、CAT(信用照会端末)、医療機関のレセプト(診療報酬明細書)のオンライン請求など、音声通話以外のさまざまな用途でも広く活躍していました。
アナログ回線と比べて通話品質がクリアで、盗聴されにくいセキュリティ面のメリットもあり、長年にわたり企業の通信インフラを支えてきました。
INS回線が終了する理由とスケジュール
INS回線は、長年ビジネスの通信基盤を支えてきましたが、現在終了に向けた段階へ入っています。
INS回線は現在すでに一部のサービスが終了しており、今後時間をかけて完全に終了する予定です。
企業の担当者様が「いつまでに何をすべきか」を明確に理解できるよう、以下ではINS回線が終了する理由や具体的なスケジュールについて詳しく解説します。
INS回線が終了する理由
INS回線が終了する主な理由は、NTT東日本・西日本が通信網の仕組みを従来の「固定電話網」から「IP網」へと全面的に移行しているためです。
また、固定電話網を維持するための設備が、老朽化していることも理由として挙げられます。
さらに、高速なインターネット通信が可能な光回線の普及に伴い、INS回線の契約者数は年々減少し続けていました。
このような背景から、次世代のIP網へ通信インフラを統一し、サービスの効率化を図る目的で、INS回線のサービス終了が決定されたのです。
サービス終了のスケジュール
INS回線のサービス終了は、段階的に進められます。
まず、最初のステップとして2024年1月にINSネットの「ディジタル通信モード」の提供が、地域ごとに段階的に終了しました。
これにより、POSシステムや警備システム、CATなど主にデータ通信でINS回線を利用していたシステムは、原則として代替サービスへの移行が必要になっています。
ただし、当面の「補完策」としてデータ通信は可能ですが、通信速度の低下や遅延の可能性があるため、早急な移行が推奨されます。
参考:NTT西日本「『INSネット』をご利用の事業者さまへ」
2024年1月以降も「通話モード」は引き続き利用できるため、電話やG3規格のFAXは当面の間、使用可能です。
そして、2028年12月31日をもってINS回線のサービス自体が完全に終了します。この日を過ぎると、通話モードも利用できなくなり、完全に通信ができなくなります。
そのため、現在INS回線で電話やFAXを利用しているすべての企業は、2028年末までに代替となる電話サービスへの移行が必要です。
INS回線と他の回線との違い

INS回線への理解を深めるため、他の主要な電話回線との違いも見ていきましょう。
ここでは、アナログ回線やADSL回線、そして現在主流の光回線を取り上げ、INS回線との違いやそれぞれの特徴を解説します。
アナログ回線との違い
アナログ回線は、音声の波をそのまま銅線(メタルケーブル)に乗せて伝える、昔ながらの電話回線です。
仕組みが単純なため、停電時でも電話機自体に給電されていれば通話できる点がメリットでした。
一方、INS回線は音声をデジタル信号に変換して送受信する仕組みです。
そのため、アナログ回線よりノイズが少なく通話品質がクリアなうえ、1契約で2回線分の同時利用ができる点で優れていました。
ADSL回線との違い
ADSL回線は、アナログ回線と同じ銅線(メタルケーブル)で高速なインターネット通信を実現したサービスです。
音声通話で使わない高い周波数帯を利用するため、電話とインターネットを同時に利用できました。
INS回線もインターネット接続に利用できましたが、通信速度でADSL回線が上回ります。
ADSLは「下り(ダウンロード)」の速度を重視しており、下り最大50Mbps程度出るのに対し、INS回線は最大64kbps程度しか出ません。
ADSLも光回線の普及に伴いサービスを終える流れにあり、NTT東日本・西日本の「フレッツ・ADSL」は2026年1月31日にサービスを終了する予定です。
光回線との違い
光回線は、現在最も主流となっている通信回線です。
従来の銅線ではなく光ファイバーケーブルを使い、光の点滅でデータを送受信する仕組みで、外部ノイズの影響を受けにくく、非常に安定した通信ができます。
INS回線が最大64kbpsの通信速度だったのに対し、光回線は1〜10Gbpsと、その速度には圧倒的な差があります。
この高速・大容量・高安定という特性が、高品質なIP電話やWeb会議、クラウドサービスの利用といった、現代ビジネスに不可欠な通信環境を支えているのです。
INS回線のメリット
サービス終了が決まっているINS回線ですが、多くの企業で利用されてきた背景には、主に以下の3つのメリットがありました。
- 盗聴の心配が少ない
- 1番号で2回線利用できる
- 音質が良い
ここでは、それぞれのメリットを詳しく解説します。
メリット①盗聴の心配が少ない
INS回線は、音声を0と1のデジタル信号に変換して通信する仕組みです。
アナログ回線は音声の波をそのまま電気信号で流すため、回線を分岐させるだけで比較的簡単に盗聴できてしまう脆弱性がありました。
一方、デジタル信号のINS回線は通信内容が符号化されています。仮に回線から信号を抜き取られても、音声として復元するには専門の機材が必要で、傍受のハードルが格段に高かったのです。
このセキュリティ性の高さからビジネスシーンで信頼され、特に秘匿性の高い情報を扱う金融機関などで広く採用される理由となりました。
メリット②1番号で2回線利用できる
INS回線は、1つの電話番号契約で同時に2つの通信チャネルを利用できる点が大きな特徴です。
これにより、「電話で話しながらFAXを送る」「2人同時に外線通話する」といった使い方ができました。
例えば小規模なオフィスでも、顧客からの電話に対応しながら取引先からの注文書をFAXで受信できるため、ビジネスチャンスを逃す心配がありません。
アナログ回線では2契約が必要だったところを、1契約で2回線分の働きをするINS回線は、コストを抑えつつ業務の生産性を向上させる画期的なサービスでした。
メリット③音質が良い
INS回線はデジタル通信のため、アナログ回線特有の「サー」というノイズや、通信距離による音声の劣化がほとんどありません。
アナログ回線は、基地局からの距離が遠くなるほど信号が弱まり、雑音や混信が発生しやすくなる特性がありました。
そのため、重要な商談で相手の声が聞き取りにくい問題が起こりがちでした。
一方、デジタル信号は距離による品質の劣化がないため、遠隔地の支社や取引先との通話でも、常にクリアな音質を保てます。
聞き間違いなどのコミュニケーションロスを防げる高い通話品質は、正確性が求められるビジネスシーンにおいて、非常に大きな魅力でした。音声情報がビジネスの生命線となる多くの企業にとって、信頼できる通信手段だったのです。
INS回線を使うデメリット
一方で、現代の通信サービスの視点から考えると、INS回線にはビジネス上無視できない以下のデメリットも存在しました。
- 通信速度が遅い
- 回線使用料が高い
それぞれのデメリットについて以下で解説します。
デメリット①通信速度が遅い
INS回線の最大のデメリットは、通信速度が圧倒的に遅い点です。
INS回線の通信速度は最大でも64kbps程度です。これは、1MBの画像ファイルをダウンロードするのに約2分以上かかる計算になります。
現在の主流である光回線は1〜10Gbps(1Gbps = 1,000,000kbps)であり、その差は歴然です。
快適なWebページの閲覧にさえ1〜5Mbps程度の速度が必要な現代において、INS回線の速度では、Web会議やクラウドサービスの利用はもちろん、日々の業務でWebサイトを閲覧することすら困難です。
デメリット②回線使用料が高い
INS回線の月額の回線使用料は、一般的なアナログの加入電話や、光回線を利用するひかり電話と比較して、かなり高い傾向にあります。
例えば、事務用INSネット64の月額料金は4,323円(税込)ですが、ひかり電話の基本プランは月額550円(税込)から利用可能です。
さらに、通話料についても、距離に応じて料金が変動するINS回線に対し、IP電話は全国一律料金であることが多く、トータルコストで比較しても割高になります。
通信速度が遅いにもかかわらず、月々のランニングコストが高い点は、企業にとって大きなデメリットといえます。
INS回線終了後の代替サービスはIP電話
INS回線のサービス終了に伴い、企業が選ぶべき代替サービスのおすすめは光回線を利用した「IP電話サービス」です。
IP電話とは、インターネットプロトコル(IP)という技術を利用して、インターネット回線(光回線)経由で通話を行う電話サービスです。
NTT東日本・西日本が提供する「ひかり電話」がその代表例ですが、その他にもさまざまな通信事業者が独自のIP電話サービスを提供しています。IP電話に移行することで、コスト削減や通話品質の向上など、多くのメリットが期待できます。
現在利用しているINS回線の電話番号は、「番号ポータビリティ(LNP)」という制度を利用すれば、多くの場合そのままIP電話サービスに引き継ぎすることが可能です。
番号ポータビリティとは、契約する電話会社を変更しても、電話番号は変えずに継続して利用できる仕組みを指します。
これにより、顧客や取引先に電話番号の変更を通知する手間がかからず、スムーズに新しい電話環境へ移行できます。
IP回線については、以下の記事で詳しく解説しているので併せてご覧ください。
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INS回線からIP電話への移行はアライブネットにお任せください!
今回の記事では、INS回線のサービス終了に関する情報や、代替となるIP電話サービスについて解説しました。
INS回線からIP電話サービスへの移行は、単なるインフラの切り替えではありません。
これを機に、自社の通信コストを見直し、より高品質で経済的な電話環境を構築する絶好の機会と捉えるべきです。
アライブネットが提供するIP電話サービス「Alive Line」は、まさにその課題を解決するための最適な選択肢となるでしょう。
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プラン | 秒課金プラン | 1分課金プラン |
---|---|---|
固定電話通話料 | 0.06円〜 | 2.6円〜 |
携帯電話通話料 | 0.25円〜 | 12.5円〜 |
※上記はご提供例です。
もちろん、番号ポータビリティにも対応しているため、今お使いの電話番号を変えることなく、スムーズに乗り換えが可能です。
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